a note

8月  嵐の大洋

 

 

 
1999

8月12日

 

■嵐の大洋

 先月までのハナシの流れで言えば“嵐の大洋”はアポロ12号の着陸地点ってことだけど、こんかいは地球上のハナシ。

 立て続けに航海モノを読んでいる。個人的には特に海モノが好きだという感覚はないけど、最近では第17回日本冒険小説協会大賞の特別賞に輝いた『エンデュアランス号漂流』(アルフレッド・ランシング著 新潮社刊)と、そのエンデュアランス号の船長が綴った『南へ エンデュアランス号漂流』(アーネスト・シャックルトン著 ソニーマガジンズ刊)を読んでシミジミしていたし、小学生の頃には『ツバメ号とアマゾン号』などのアーサー・ランサム全集最近復刻版が出てるようで、購入しようかどうかちょっと迷ってマス)なんかを読んでた記憶があるので、もしかして嫌いじゃないのかも....。

perfect storm『パーフェクト・ストーム 史上最悪の暴風に消えた漁船の運命』(セバスチャン・ユンガー著 集英社刊) 読み始めたばかりだけど、ち密な取材に裏付けられた文章が印象的なノンフィクションだ。

 '91年10月に北米大陸の大西洋岸を襲った今世紀最大規模の“パーフェクト・ストーム”というテーマに興味を持ったのはもちろんだけど、それ以上に著者セバスチャン・ユンガーに興味を持ったのが購入理由だ。'62年生まれで大学で文化人類学を学び、卒業後は定職に就かずに各地をクルマで放浪しながら雑誌に寄稿、ラジオ局の従軍記者として内戦のボヘミアにも行っている。そうしたジャーナリスト系の仕事をしながら、枝打ちや伐採といった森林作業のアルバイトに従事しており、本書が'97年に全米でベストセラーになった後も「なにか確かなものとの関わりを失わない」ために、週に1度はその仕事を続けているそうだ。カッコイイっスねぇマッタク。

 もう一冊は『航海者』(上・下巻 白石一郎著 幻冬舎刊)。オランダから大西洋を横断、マゼラン海峡を越え3年の月日をかけた苦難の航海の末に日本へとやってきたウイリアム・アダムス。後に徳川家康の参謀・三浦按針として活躍した氏の生涯を描いた小説。「航海者には航海することが必要だ。生きることは必要ではない」というアダムスの言葉が心に残る。札幌には珍しく暑くて寝苦しい夜のせいもあって、上下巻ほぼイッキ読みだった。
 ちなみに日本のファンタジー童話を代表するコロボックルシリーズ(『だれも知らない小さい国』など)でおなじみの佐藤さとる氏の自伝的名作、『わんぱく天国』(講談社文庫刊)の舞台となっているのが按針塚(あんじんづか・三浦按針夫婦の墓)のある塚山公園一体。僕はこの童話の舞台としての按針塚に一度は行ってみたいと常々思っていたけれど、『航海者』を読んでもうひとつ行きたい理由が増えてしまった。


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