a note

9月 

Think Small

 
 アメリカのTVCF
 
 The Day After Trinity 
 フムフム  

 

1999

9月30日

 

■ Think Small

 VW Beetleと言えば、忘れるわけにはいかないのが“あの広告キャンペーン”だ。“Think different”って聞いて真っ先に思い出したのもコレである。

 1950年代後半から60年代にかけてのアメリカ。TVネットワークが黄金期を迎える直前の当時、一番輝いていたメディアは『Time』や『Life』といったグラビア雑誌だったそうな。その雑誌に花を添えていたのが、あふれんばかりの広告だ。
 “広告は時代を写す鏡”なんて文章にしちゃうと大げさだけど、ムカシの広告を見ると、確かにその時代その時代の空気を色濃く映している。外国の広告とか見ても“お国柄”って絶対に出るもんだし....。ま、この手のハナシは片岡義男氏(バイクやサーフィン小説だけのヒトではアリマセン)と天野祐吉氏(元広告批評編集長)に語らせるのがイチバンだけど。

 で、当時の広告でもっともインパクトがあったといわれるのが、ドイル・デーン・バーンバック(DDB)という代理店が手がけたフォルクスワーゲンのものだ。その頃のアメリカのクルマって、ご存じの通りシロナガスクジラのようなデカいボディに羽やらクロームメッキでお化粧して、毎年外観をモデルチェンジをするようなシロモノだったわけで。 あ、いや けなしているわけではアリマセン。

 そんな時代に(ほぼ)“同じデザイン”で生産され続けた、ちょっと見“ヘン”な、しかも異国の“小型車”を売ろうってンだから偉かった。モノクロの写真と意表をついたコピー、そしてその説明という超シンプルな構成で、満艦飾の、グラフィックな広告と闘ったのだ。しかも同じコンセプトで17年間に渡って250点以上もの“作品”を発表し続けた。

 なかでも傑作なのがこの「Think Small」だ。デカいクルマが人気を博した時代に“小さいことが理想”と来たもんだ。
  もひとつ有名なのが「Lemon(不良品)」と題されたもので、何の変哲もないビートルが一台登場し、このクルマはクロームのメッキがちょっと剥げてたという理由で出荷されなかったというボディコピーが続くもの。要は品質チェックが厳しいよということなんだけど、いきなり「不良品」ってのも偉い。

■余談1
 なーんて知ったかぶりして書いたけど、ホントは
『フォルクスワーゲンの広告キャンペーン』(西尾忠久著/美術出版社刊 1963年6月発行 絶版)
『ナビブックス 広告「右説・左説」かくも雄弁なクルマたち』(梶祐輔著/二玄社刊1988年12月発行 たぶん絶版)
『企画のお手本 VWビートルによる発想トレーニング副読本』(西尾忠久著/KKロングセラーズ刊 1986年5月発行 絶版)
の各本をさんこーにシマシタ。しっかし我ながら変な本を持ってるもんだ(笑)。

■余談2
 そうそう、シトロエン2CV(我が家のクルマ)の生誕50年を記念して、去年の秋に名古屋でイベントがあった。このイベントに全国から有志が集まり、参加できない人は思いの丈をパンフレットに寄稿した。その中に生誕60年のビートルとDDBに敬意を表してこんなのとかそんなのを送ったボクでした。
  そういやミニは誕生して今年で40年だっけ。


9月20日

 

■ アメリカのTVCF

 ひょんなことからアメリカのTVCFをQuickTimeムービーで視聴できるサイトを発見した。

 定期的に最新のCFも加えられているようで、ダウンロード数によって人気トップ10が表示されている。現在のところAppleのPowerMac G4の“ Lethal Weapon”が1位のようだ。最新のCFばかりでなく、過去に話題となったAppleの“1984”などの作品も見ることができるばかりか、sorensonコーデックで圧縮されているので比較的画質が良いのも嬉しい。

 でもホントに嬉しかったのは、見たくても見ることのできなかった幻のCFをここのサイトでを見つけることができた事だ。VWのNew BeetleのCFである。VW AmeriaのサイトでもこのCFを紹介しているが、音楽の著作権の関係か静止画でしか見ることができなかったのだ。あまりの“見たさ”にCFで使われている曲をwebで探しまくり、ついに買っちゃったりもした(その曲以外みんなハズレっていう良くあるパターンだったけど....)。

Reverse engineered from UFOs

Music : Fluke "ABSURD" (RISOTTO)

Less Flower. More Power



Turbonium

 いやぁ、iMacのCFの原点ここにありって感じだ。Steve JobsがiMacをNew Beetleに例えることが多いけど、ここまで意識してるとは。ちなみにiMacのTVCFはこちら。いずれにしても、クルマなのに走ってない(飛んでる!)、PCなのに電源が入って無くてナニも映ってないなんてCFはスゴイよなー....。

 このほかにもJaguar S typeやLexus、MercedesなどのCFもある。クルマばかりじゃなくいろんな企業のCFがあるので、ヒマを見つけては覗きにいっている今日この頃でアリマシタ。


9月05日

 

■ The day After Trinity

 ボイジャー社のCD-ROMでどうしても紹介しておきたいものがある。『ヒロシマ・ナガサキのまえに 〜オッペンハイマーと原子爆弾』だ。

The Day After Trinity 『1945年7月16日、人類初の原爆実験が米ニューメキシコ州アラモゴードの“トリニティ・サイト”で行われた。ジョン・エルスによるドキュメンタリー映画「The Day After Trinity」は「原爆の父」オッペンハイマーの思想と生涯を柱に、ふんだんなインタビューと記録映像を駆使して、国家対立、政治力学、軍人、狂信者、政治家、文人、スパイ、そして物理学の巨星たちが複雑に織りなす、原爆製造〜投下〜冷戦へと至る歴史の歩みを明らかにする。

 CD-ROM化にあたっては、映画の編集段階で割愛せざるを得なかったインタビューの全文、取材時の背景・状況解説、膨大な関連資料群を補い、映画でしか伝えられないこと、映画では伝えきれなかったことの全貌をエキスパンドブックに再構成した。これは歴史を伝えること、映像が伝えること、そして知ることの困難さと大切さについて考える、ユニークな電子出版の試みである』(パッケージより引用:太字等は筆者)

 映画本編88分をQuickTimeムービーで鑑賞し、あわせて1832ページもの“電子書籍”を読むことで、映画でしか伝えられないこと、映画では伝えきれなかったことの全貌を把握できる。CD-ROMというメディアも捨てたもンじゃァない。

 なんだか原爆がらみの本が気になったのでブックウェブ紀伊国屋で検索したところ、『原子爆弾の誕生 上・下 〈普及版〉』(上下巻各752頁 リチャード・ローズ著 神沼二真・渋谷泰一訳 紀伊国屋書店刊)を発見。早速注文した。
 いわゆる“タイトル買い”に近かったため、学術書みたいな本が届いたらどーしよーなどと面白半分で心配していたが、いざ届いてみたら見た目も内容も予想以上に重量級の本で驚いた。

 しかしブックカバーに著名人の推薦文があり、

興奮を呼ぶ知的冒険物語。私たちの未来を左右する重大な歴史的大事件を明快かつ息をつかせぬテンポで展開する。(以下略) カール・セーガン


『原子爆弾の誕生』は20世紀前半の物理学の発展について、私が読んだ本のうちで最良であり、最も示唆に富み、最も内容が深い。最高に楽しく読ませてもらった。 アイザック・アシモフ

 と面白そう。原書は1988年、ピューリッツァー賞を受賞している。

 さて。2週間ほどかけて読み終えた。原子物理学にかんする記述が少なくなく、キチンと理解できなかった部分もあるけれど、いろいろな場所でいろいろなことが起こり、そのすべてが終章に向けて一気に1本の糸にまとまっていくという、トム・クランシー的なノリで読めてしまった。

 ひとつ発見があった。コンピュータの父とされる数学者フォン・ノイマンは、マンハッタン計画において原子爆弾の起爆装置の要となる“爆縮”の原理を実用化に導いた。爆縮は長崎型原子爆弾(ファットマン)に使われ、以後多数の核爆弾の起爆装置として使用されている。この際、流体力学を応用した膨大なデータ処理のためにIBMの計算機(パンチカード読み取り機)が威力を発揮し、後にノイマンは“このような機械”をどう改善すれば良いのかに力を注ぐようになったという。そのときも、そしてそれからも、(電子)計算機は原子爆弾を生み出し、改良するためのもっとも直接的な道具だったというわけだ。
 ※写真右が“爆縮”を起爆装置に利用した“ファットマン”。左は“広島”に投下された“リトルボーイ” 。(09/06 画像追加)

 先日、Apple PowerMac G4のCMを見た。なんでもCPUの処理速度がスーパー・コンピュータ並になったとかで、アメリカ政府から初めて“兵器”として認めれられたPCとなったことをネタとする内容だ。クワイ川マーチ(?)をBGMにパットン戦車(?)が登場したりして、見かけ的には決して嫌いな世界じゃないけど(笑)、トリニティー・サイトに至る物語とトリニティ・サイトがもたらした世界を読んでしまうと、なんだか手放しで喜ぶわけにもいかないなーというのが正直なところ。

 知人に聞いた話。かの宮崎駿の言葉。「戦争は大っ嫌いだけど、兵器は大好き」。

 御大みずからそう言っていただけると、気持ち的にとても助かります(笑).....。


9月02日

 

■ フムフム

 『人類、月に立つ(下)』(アンドルー・チェイキン著/NHK出版刊)が書店に並び始めた。アポロ計画にまつわる人間ドラマを、上巻に続き13号から最終の17号まで追ったもの。

for all mankind先日、DiVOという“マルチメディアのコンビニエンスストア”でボイジャー社のCD-ROMを特価で売っていたので、何タイトルか購入した。※セールは8月末で終了
  その中に、アポロ計画の全容を記録した記録映画『フォー・オール・マンカインド』(89年アカデミー最優秀ドキュメンタリー賞受賞)をCD-ROM化した『宇宙へのフロンティア』があって、監修者として上記『人類、月に立つ』の著者、アンドルー・チェイキンの名前が挙げられていた。またこの記録映画の監督であるアル・レイナートは、95年夏に公開された映画「アポロ13」の脚本を担当しており、フムフムと納得。
 記録映画と周辺資料の融合という点ではなかなか面白いCD-ROMだけど、肝心の記録映画じたいがアポロ計画のすべての見所をロケット発射→月着陸→帰還という時間軸で紹介しようとしているため、発射は7号だけど月への航行中に司令船にトラブルが起き(13号)、月着陸シーンは11号、月面での活動にいきなりルナ・ローヴァー(月面走行車:15号から使用)が登場したりと、見る側が混乱してしまうのが残念。

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